第3章 思考回路の外
僕はPCの前で座ってゲーム配信をしていたはずなのに、どうやら自分の体ごと変な世界に来てしまったみたいだ。
随分落ち着いているって? 正直内心は焦っていたよ。
でも焦っていても何もならないと思って、僕はこの状況を受け入れた。そして多分、僕はここから脱出しなくちゃいけない。ここが夢じゃなければね。
配信はどうなったんだろう。そんな心配が過ぎったが、まさか配信した時からもう夢だったとかならもう何を信じていいか分からなくなるから今は考えるのをやめておく。それより、今は周りの景色を観察しよう。
僕は、浮島みたいなところの真ん中に立っていた。多分上から落ちてきたんだと思っているけれど、周りは真っ暗、島の周りも黒い水か液体に囲まれていて不穏な雰囲気ってことだけは分かった。
そして目の前には、五つのゲートがあった。例えるなら、そう。某ゲームの地獄行きポータルみたいなあれ。
だけど紫の膜みたいなのがある訳ではなく、どれも開通していないみたいだった。……一つを除いて。
一つのゲートだけ、どこかに繋がっていそうな膜が張ってあったのだ。これが撮影か何かだったら「絶対押すな」ボタンではなく「絶対入るな」ゲートだ。そしてゲートのそばには見覚えのあるツルハシが立てかけられていた。
MENのツルハシだ。
精巧な造りをしたツルハシで、見た目は大きいが柄とツルハシの頭を繋ぐ部分にある歯車が力を分散させて使いやすくなっているんだそうだ。という設定って話なだけなんだけど。
そしてもう一つはかなりリアルなダイナマイトの束も添えてある。これはヤバイ雰囲気しかないが他に行く宛もない。
「まるで誰かが仕組んだみたいだ」
と一人呟いても返事をする者はいない。
僕はゆっくり息を吸って吐き、覚悟を決めた。
「……行こう」
僕は、MENのツルハシとダイナマイトが立てかけられているゲートへ、足を踏み込んだ。