第2章 きっかけ
きっかけはアツクラワールドのこと。もう少しでこのワールドが終わる頃に差し掛かっていて、僕は思い出を振り返るようにあちこちの建物や場所を見て回っていた。
アツクラも大きな箱になってきたからか、配信に見に来る人が多かった。しかも今日は週末の昼間というのもあって、初見さんが多かったんだ。
どれも反応は良かったけれど、特に反応が多かったのは僕が作ったかわちぃ家。初見さんは「可愛い」と言ってくれたけど、長く見てくれている人がザワザワしていたのは記憶に新しい。
「初見さんのみんなにも紹介しましょう」
と僕がドアを開けてかわちぃ家の内装を紹介する。
そこにある禍々しさにみんなの反応はまちまちで、僕はちょっとそれらを楽しんでいた。
そこまではいつもの配信だった。はずなのに。
「え、ここどこ……?」
かわちぃ家を出た瞬間、僕のよく見知った景色は消え、まさしく「深淵」の穴があったという訳。それで今の僕になる。