第12章 四角い世界
ゲートの先に見えてきたのは、明るい緑と青い空。僕らがいたところより鮮やかな色合いに、眩しさを錯覚した程だ。
「あれ、ここ見たことないです?」
とまず話し出したのはおらふくんだ。辺りをキョロキョロしている。
そう言われて僕も辺りを見回してみる。見渡しのいい草原に、灰色の壁と茶色い屋根の建物が点々と建っていた。だがちょっと待って。この建物、どこかで見た気が……。
「ここ、ゲームの村だ! ほら、雲だって四角い!」
とMENが指した上空には白い雲が浮かんでいた。僕はもう一度建物を見やる。ここってもしかすると……。
「ゲームの中の村……?」
「やっと参加者が来たんですね」
僕が呟いた瞬間、目の前に突然現れたのは……おんりーだった。
ゲームの世界でリアルのおんりーを見るのは本当に非現実的で。だけど何か様子がおかしい。おんりーのこちらを見る目つきが鋭いのだ。
「ねぇおんりー、僕たち、この世界から出ようとしてたんだけど」
「おらふくん、待って──」
「おらふくん、危ないっ」
邪気のないおらふくんがおんりーに普通に声を掛けたので、僕は止めようとしたところに視界の端から何かが走った。すんでのところでMENがおらふくんを引っ張り上げて助けたが、地面にえげつない割れ目が出来ていて僕は自分の目を疑った。
「どうして俺の名前を知ってるかは知らないですけど」おんりーは片手にいつの間にか青い剣を構えながら淡々と話し続けた。「ここに来た人は、みんな斬れって言われてるんですよ。だから斬りますね」
「ええっ、誰に!」
なんてことを言い出すんだ、と僕はおんりーに問いただしたが、返ってきたのはこれだけだった。
「分かりません。ただ、ここに来る人たちを斬ったら、記憶が戻る気がしてます」
あ。僕は気づいた。この世界は「記憶喪失のおんりーを救え」だ。
僕はそれだけが分かった。