第10章 帰り道
バタン……!
扉を閉め切った僕たちは、すぐに扉の列の正面に集まって何か変化は起きていないかと様子を伺う。
……何も起こっていない。
それもそうか。壁もない雪原に扉だけあるこの空間にどんな仕掛けが組み込めるというのか。僕は落胆して別の方法を探そうと言いかけた時に少年おらふくんが声をあげた。
「あ、僕のお家や!」
「え」
少年おらふくんが指す方向を振り向くと、確かにそこにはぽつんと建物が現れていたのである。こんな大きな建物なら見過ごすはずないのに……と思ったが、少年おらふくんは何も疑うことなく自分の家らしいものに向かって駆け出した。
「おらふくん……!」
僕はつい呼び止めた。そもそもこんなところに現れた建物が本当におらふくんの家なのかという疑問もあったが、何よりこのままおらふくんを行かせていいのか? という不安もあった。
「なぁに?」
少年おらふくんは僕たちを振り返った。彼の歩いたところに、小さな足跡が残っている。
僕はちらっとMENの方を見た。MENはこういう時、何か口を出してくるような人ではない。きっとここは、僕が判断をしなきゃいけないんだ。僕はそう思った。
僕は少年おらふくんへ視線を戻す。まだあどけない青い目をした少年が、僕を見つめ返していた。
僕は、いつの間にか力が入っていた拳を広げた。