第9章 ある意味迷路
「わ、こっちもフセーカイだ!」
無邪気な少年おらふくんのおかげで、いくつもある扉は全部不正解ということが分かった。呼び止める前に、おらふくんがさっさと扉を開け続けたからだ。
扉は、壁もないところにぽつんぽつんと設置してあって、開けた瞬間マグマが現れる……という某ゲーム仕様でもなかった。がしかし、某ゲームのように「行き止まりに見える透明ブロック」もないことも判明して僕たちは詰んでいた。
「うーん、ここがこんちゃっちゃ迷路なら、偽物の壁とかあると思ったんですが」
とMENが唸ると、少年おらふくんが不思議そうな顔でこちらを見上げた。
「こんちゃっちゃ迷路ってなぁに?」
それは君が考えた迷路なんだけど、と言いたいところだが、子どもおらふくんに言っても記憶がないので黙っておいた。おらふくんみたいなのに、まだ僕らと出会うおらふくんじゃないんだなぁと思うと新鮮で、複雑だった。おらふくん、ずっとこのままって訳じゃないよな? まぁこのままでもいいんだけどね。
もしおらふくんが僕と会っていなかったら。
なんか暗い気持ちが湧いてきたかも。おらふくんは僕たちとゲーム実況をして、楽しそうにしているし、実際よく楽しいとか嬉しいとか言ってくれる。僕は僕の知っているおらふくんを信じている。
「ここって、おらふくんがどこかで作ったことのある迷路に似てるんすかね」
とMENが呟くように僕に聞いてきた。そうかもしれないけど、いつもこんちゃっちゃ迷路を解いていたのはぼんさんだ。ということは、ぼんさんの気持ちになって考えたら分かってくる……?
僕は少年おらふくんへ目を向けた。少年おらふくんは扉の前や後ろを行ったり来たりして走り回ったり覗き込んだりしていた。こうして見ると、ただの元気な男の子だ。