第4章 めぐりめぐる転生はどこへやら
手を綺麗に拭いていると、目に入ったのはバレーボールだった。
新品というよりかは少しくたびれてるような気もするボール。
それをそのままになんてするのはなんか嫌だったので、タオルを持ち拭くことにした。
しばらくすると少し悲しんでいたボールはピッカピカに!
せっかくなので外に出て1人でボールを上げて、オーバーで上に出す、次はアンダーで出すを繰り返しながらやっていた。
運動神経が無い割にはできているんじゃない?だって、元美術部だもん。やるわけが無い。
何となく数も数えて50回を超えると更に楽しくなってきた。
もしかして100回出来るのでは?
流れる汗をそのままにやっていると、風邪ひくで?と声が聞こえた。
ポン…ビックリしたのもあり思わず落としてしまったボール。
『お、おかえりなさい?』
タオルを渡されたので拭くことに。
そして落ちたボールは信介くんが拾ってくれたようだ。
「えらい上手やんな、自分。前もバレーボールやっとったとか?」
『いや、前は美術部だったし。なんでだろ、体が覚えてるのかな?』
信介くんはバレーボールを見つめて考え込んでいた。
「もしよかったらやけど、一緒にバレーボールやらんか?」
有無を言わせぬ圧を感じながら、せっかく仲良くなれるチャンスなら誘いにのろうじゃないか。
『うん、よろしくね。信介くん。』
一旦鞄を置きに玄関へ向かう信介くん。
言わなかったけど彼は私ではなく、きっと北を見たいのだろう。
記憶喪失になってから一度も名前を呼ばれたことなんてない。
彼なりの葛藤があるんだろうな。
ある意味私は居候のもんだから彼の心のケアもしてあげたいが、いかんせん前の私を一番知っているのも彼なのだ。どっちにしても傷つけてしまうに違いない。
いや、どうやって聞こう。