第3章 もう三年生になったよ〜あっという間の時間。
どうすれば良いか悩んだ2秒。
失敗したら殺されるというのもあるが、一か八かである。
『ふん!』
勢いよく足をあげて男の股間を蹴る。
情けない音が聞こえたが無視。早くここから出ないと。
スルッと男の横から抜け出し、扉へ向かう。
上手く靴は履けなかったが、仕方ない。
鍵を開けて猛ダッシュした。今度は家に向かって。
信ちゃんに謝らないと、ごめんなさいって。
信ちゃんの影が見えてきた時にホッとしたのが悪かったようだ。
後ろから追いかけてきたおじさんが私の長い髪の毛を引っ張る。
『った!!』
引っ張られそのまま地面に頭を打ちつけたようだ。
「よくも、やってくれたな!!」
怒りで顔を真っ赤にさせたおじさんが私の左頬をグーで殴ってくる。
頭を強く打ったせいかあまり思考が働かない。
痛い頬やお腹等、殴られる度に痛みと共に意識が遠ざかっていくのを感じた。
それとは裏腹に脳内に流れる知らない記憶。
場所は違うが路地で殴られて倒れる私。
誰も助けなんて来なくて、そのまま死んじゃったんだね前世。
こんな時に思い出すなんて…私の人生の終わりは一緒だったんだ。
前世の辛い気持ちも今の辛い気持ちも、きっと神様が与えた罰なのだろうか。
意識が遠くなっていくのを感じながら、横目で信ちゃんが見えてくるのを感じる。
あまり動かない手を信ちゃんに伸ばす。
ごめんね、信ちゃん。"ちゃんと"してなくて。
聞こえてくるパトカーのサイレンの音をBGMにしながら、目を閉じていった。