第3章 もう三年生になったよ〜あっという間の時間。
「は優しすぎんねん。家のこと考えるんやったら分かるけど、多分オカンもオトン、ばぁちゃんやってお金のことは気にして無いと思う。そういうとこはほんま良いことなんやけど、のやりたいことではないよな?中学までは決まった道やけど、自分でほんまにやりたいことを考えて決める。それをするんも大事なことや、もう少し考えてみ。」
生で頂く正論パンチが心に響く。
いつもだったら、イェーイ!!と脳内エレクトリカルパレードなのだが、いかんせんまじめに言われすぎたのが先にきた。
明るくなれないというか、さっきまで呑気に適当に考えてたことが真剣に向き合わないと行けないことに気づく。
見透かされてるのかなと思う位透き通った瞳が今は辛い。
『…はい。そ、うしっ…!』
返事を返そうとするも上手く言葉が出ない。
鼻がツーンとなり、泣きそうになる。
嘘だろ、まじか。推しに泣いている姿だけは見られたく無い。
隠すために勢いよく居間を出て、玄関に向かう。
後ろから名前を呼ばれるが振り向いてなんていられない。
勢いに任せて靴を引っ掛けるように履き、信ちゃんから逃げるように外に出た。
後ろから追いかける音が聞こえたので、更に逃げるように走った。
『っは!っあ!』
普段走らないが故の自分の体力を全力で恨むが今は仕方ない。
一人になりたいから逃げる、逃げる、逃げる。
捕まったら絶対に怒られるし、信ちゃんは私が泣いてしまったことに対してもきっと罪悪感を抱いてしまうだろう。
信ちゃんの心に残りすぎてしまうことが本当に辛い。
ある程度まけたはずなので、近くの公園の茂みに隠れ込む。
今更だが携帯すら持ってない。
あの携帯だって欲しくて持っていた訳ではない。何も話せないと思ってる両親が買い与えてくれたってだけ。
欲しいなんて言ってなかったのに。
今更色んな怒りや気持ちが爆発してきてることに気づいた。
北さんの正論パンチなんて、ずっと前から知ってたのに。
なんでこうまで響いてしまうのか。
そこでふと考えつく、思ってはいけない感情の名前を思い出した。
"好き"
ただの推し活で憧れるだけでよかったのに、こんな世界まできて推すだけでは満足できなくなってしまった自分がいることに気づいた。