第38章 緋色の実情
小さな背丈には少し高すぎる窓の外に目を向け、言葉を紡ぐ。
少し意味深な物言いだったが…
優作はそれに対しては敢えて何も、突っ込まなかった。
新一との会話が一区切り終わると、先程から静かに座り、一部始終を見守っていたもう1人の人物に声をかける。
優作「椛さんも、長い時間拘束してしまってすまなかったね。」
椛「…
本当、長すぎ…」
いつもの彼女なら涼しい顔で返すだろうが…
工藤邸に来てからもう大分時間が経っている。
流石に長すぎた拘束時間に、小言の一言でも言いたくなったのか…
素の一言が出たようだった。
優作「彼がいつ訪ねて来るか分からなかったからね。
まぁ、思いの外、直接色々話せて面白かったよ。
彼には悪い事をしたが…
椛さんも知っての通り、こちらも事情があるのでね。
それにしても、噂には聞いていたが…
流石の切れ者だな。
椛さんの恋人は。
長く…組織に潜入しているだけの事はある。」
優作が言う『彼』とは正しく、降谷零の事だろう。
窓の外を眺めていたコナンも、彼女の方に視線を移した。
そのコナンの表情は、作戦が上手くいったことも相まってか、自信に満ちているように見える。
コナン「椛さん?
椛さんはやっぱり知っていたんだよね?
安室さんの…
本当の正体を…」
声をかけられて、椛はコナンに視線を向けるが…
口を閉じて、無表情のまま…
何の感情も読み取れない。
答える気が無いように見える彼女のその姿に、コナンは少しばかり目を細めた。