第36章 友情と責務
椛「黒田さん…」
黒田「なんだ?」
椛「私、彼の力になりたいのに全然なれてなくて…
最近、物凄く手持ち無沙汰感を感じているんです…」
黒田「…」
椛「何か私にできる事、他にありませんか?」
黒田(この人は…)
ジッと視線を向けられているのを感じ、運転をしつつチラリと助手席に目を向ける。
一瞬目に映った彼女の表情は、何か切迫詰まった様で少し悲しげな表情をしていた。
黒田「君は…
自覚症状無しか…」
椛「えっ?」
ポツリと口にした黒田の言葉に、今度は不安そうな表情に変わる。
黒田「私の聞き間違えでなければ、椛さんは『アイツの力になれていない。』と言ったのか?」
椛「?
そうですけど…」
彼女からの返答に、珍しく黒田は分かりやすく大きなため息を吐いた。
黒田「もう十分過ぎるほど力になっているだろう。
アイツにとっても。
そして私の協力者としても。」
少し呆れる様に彼女に説明するが、当の彼女は少し眉間に皺を寄せてあまり納得していない様な表情を浮かべている。
椛(そうかな…
協力者としては、知ってても黒田さんに言えない事、既に大分抱えてるんですけど…)
本当は黒田に報告べきする所を、それぞれの立場や立ち位置を考えると報告出来てない…
又は、報告出来ない要件が日に日に折り重なっていく事に、彼女は罪悪感を感じていた。