第36章 友情と責務
椛(どうしたんだろう、急に…
今までこんな呼び出しのされ方、黒田さんからされた事ない…
何かあったんだろうな…)
はやる気持ちを抑えつつ、平常を装いながら、待ち合わせの駐車場まで急ぎ足で向かう。
駐車場が進行方向に見えてくると、ちょうど駐車場に入っていくシルバーのクラウンが目に入った。
向こうもこちらに気付いたのか、ハザードを不自然に一瞬付ける。
入り口に入ろうと曲がった瞬間、運転席に目を凝らすと、見慣れたシルエットの男性の姿が一瞬目に入る。
椛(あれか…)
車を追うように歩行者用の入り口から駐車場に入ると、タイミングよくスマホが鳴った。
椛「はい。」
黒田「A-8あたりにいる。」
椛「分かりました。」
彼女の返答を確認すると、すぐに電話は切れる。
言われた通りA-8辺りに着くと先程の車が目に入る。
車に近づきながら中の様子を遠目から確認すると、やはり運転席には黒田の姿。
助手席の方に回り込むと、近づいてきた彼女に気付き、中から扉が開いた。
何も言わずに直様、静かに乗り込み、扉を閉めてから声をかける。
椛「何かありましたか?」
黒田「取り敢えず出すぞ。」
その言葉の通り、彼女がシートベルトに手を伸ばす事を確認すると、直様車は発車する。
車が駐車場の出口を出たところで、黒田は口を開いた。