第35章 闇の男爵夫妻
椛「そんなに私、前回と違った?
自分じゃ違いが分からないんだけど…」
彼の広い背中に回していた手を、滑らかな肌に這わせる。
キメの細かい綺麗な彼の背中は、ずっと触っていられるぐらい、滑らかで心地よい。
降谷「うん、時折いつもより切なそうな表情で俺を見てた…」
その言葉に、撫ぜていた椛の手がピタリと止まる。
降谷「椛は結構、表情に出やすいよ?」
椛「そうなの?
それ、あまり嬉しく無いんだけど…」
降谷「普段、外ではそんな事無いから大丈夫だよ。
良いじゃん俺の前では…
椛の色んな表情、全部俺に見せて…」
甘く囁くように耳元で話されると、ギュッと胸が高鳴る。
こんなにドキドキさせて、本当この人はどこまで人を落とす気なのだろうか。
どんな表情でそんな事を言っているのか気になって、顔を上げる。
そこには、薄らと目を細めて、至極幸せそうな笑みを浮かべた彼の表情があった。
椛「零…」
思わず小声で名前を呼ぶと、更に嬉しそうに目を細めて口付けを落としてくる。
今日も先程から数えきれない程重ねているのに、彼の唇の温もりを感じると、身体の中心が再び熱く疼き始める感覚がした。
そんな熱に浮かされる頭の中で、先程からの彼の質問の理由を考えてみる。
自分では無意識だったが、思い当たる節があるとすれば…
確かに一つだけある。