第35章 闇の男爵夫妻
椛「ちょっと!」
降谷「何で離れようとするんだ?」
椛「何でって…
零が恥ずかしいこと言うから…」
降谷「やだ、絶対離さない…
離れていくな…」
そして更に抱きしめる力を強める。
隙間が無いぐらいにギュッと抱き寄せられて、肌がピタリと重なる。
事後のせいだろう…
いつもよりお互いの体温は熱く感じた。
椛(甘えたなのは、零も一緒じゃ無いか…)
キツく抱き寄せられた彼の腕の中で、恥ずかしい気持ちもありつつ、彼の想いが抱きしめる腕から伝わってきて、幸せを噛み締める。
彼の胸に擦り寄り、力強い鼓動を側で感じながら、背中に腕を回して抱きしめ返した。
降谷「…それで?
今日やっぱりなんかあった?」
賢い彼から再び、先程よりも距離を詰められ、同じ質問が降ってくる。
椛(だから〜、「やっぱり」ってなんだ…?)
椛「いつも通りの日常だったよ?」
彼女も先程と同じように返事を返す。
背中に回されていた腕が、撫ぜるように頭に移動してくると、少し絡まった彼女の長い黒髪をすき始めた。
降谷「じゃあ…
いつも通りの日常の中で、何かあったのか?」
こう言う時の彼はなんと言うか…
しつこい。
粘り強いとも言うだろうが。
今までの経験上、どうやら、彼の中でこの違和感を払拭出来ない限り、同じ質問が続く事は必須に思える。