第35章 闇の男爵夫妻
椛「とりあえず、夕飯冷める前に食べる?」
降谷「あぁ、そうだな。
そうしよう。
…けどその前に」
椛「?」
降谷「一回キスさせて…?」
その言葉と共に彼女の顔に影がかかり、優しく彼の唇が重なる。
柔らかい唇の感触に腰が疼く。
彼の腰に両腕を回して抱きしめると、背中に腕を回されてしっかりと抱き寄せられる。
唇の弾力を確かめる様に重なる彼からの口付けは、基本いつも優しい。
何度重ねても、飽きる事が無いのではなかろうかと思える。
時間で言えば数秒だったかも知れないが、前後の会話のせいだろうか。
実際の時間よりも唇が重なっていた時間は長く、感じた気がした。
熱が籠った口付けが終わって、唇は離れても、鼻先が触れる様な距離で静止した彼。
瞳を薄く開くと、同じく薄く瞳を開いた彼と視線が重なる。
降谷「本当は今すぐ抱きたい…」
至近距離でそんな事を熱の籠った声で囁かれ、その言葉に素直に反応したのは本能の方か…
身体の中心がズクンと疼く。
色欲を纏い始めた彼を目の前にすると、全てを投げ出し、そのまま本能に従ってしまいたい衝動にいつも駆られる。
椛「…じゃあ一回しちゃう?」
断られるかと思っていたが、YESと取れる彼女からの言葉に、最後の理性の糸が切れて、そのまま噛みつきたい衝動に駆られるが…
降谷「椛も食べたいけど…
椛が作ってくれたご飯が冷めるのも忍びない…
こんな俺は欲深だな…」