第35章 闇の男爵夫妻
降谷「これ、単純作業だけど、なんか楽しいな♪」
椛「それはそれは良かった。
この時期だけの恒例行事だね♪
しかも毎日、この作業が2週間ぐらい続くよw」
降谷「難しい事はないけど…
量が多いと大変だな。
毎年この量、1人で捌いてるのかい?」
椛「昼間は講座で生徒さん達の分を一緒に作業したりするけど、自分の分は帰ってきてから1人で仕込んでるよ。
今年は、家用の仕込み分量も増やしたんだよね。
気合い入れて、いつもの3倍注文したんだけど…
思いの外、結構多かったなと思ったw」
降谷「3倍!
それは凄いな。
椛先生は人気者だなw」
椛「人気者かどうかは分からないけど…
これからは零も食べるかと思ったから、今年は多めに仕込もうと思って。」
彼女からの言葉に、思わず作業している降谷の手がピタリと止まる。
隣に並んで立っている彼女に視線を向けると、上から降ってきている視線に気づいたのか、彼を見上げて視線を合わせ、ふんわりと柔らかく微笑んだ。
そんな彼女の表情がたまらなく愛おしくなって、手に持っていた梅をキッチンに置くと、彼女をギュッと抱きしめ、顔を埋めた。
椛「もう~…
包丁持ってるのに危ないよ?」
降谷「ごめん…
けど抱きしめずには、いられなかったんだ…」
彼の言葉に、包丁を一度置いて、そのままの体制で手を洗って水気を拭く。
抱きしめられ目の前にある、彼のたくましい腕に手を添えた。