第35章 闇の男爵夫妻
降谷「俺も…
椛と一緒にキッチンに立つの、好きだよ。」
椛「ふふふっ♪」
満足そうに微笑む彼女に、チュッっと軽く触れるだけの口付けを落とす。
唇が離れると、少し照れたように首を傾けて微笑む彼女の姿が、愛おしくてたまらない。
降谷(まずいなこれは…
平和な時間すぎる…
いや、平和な事にもちろん越した事は無いのだが…
可愛い…
尊い…
今直ぐ抱きたい…)
そんな彼の心情を、分かっているのか分かっていないのか。
完全に作業モードに入った椛は、大量の梅が入った大きなボールを彼に手渡すと、水で全て丁寧に洗うようにお願いしてくる。
降谷(今、こんな状況で何かお願いされたら、どんな事でも
『いいよ』と言ってしまいそうだな俺はw
いや…結局同じことか?)
梅仕事の方を完全に彼に任せ、指示を出しつつ、椛は夕飯を作りに取り掛かる。
そしてその合間合間で、梅仕事の作業をする事にした様だ。
椛「手際が良いですね♪
流石、ポアロの看板シェフ。」
洗い終わった梅の、なり口を取る作業を始めた彼の手元を覗き込みながら、声をかける。
大きく立派な完熟梅を手に取りながら、褒められた事が嬉しかったのか、緩やかに口角を上げる降谷。
椛はそんな彼の隣で、ぬか床から出した大根を薄切りにしている。