第35章 闇の男爵夫妻
降谷「あぁ…もちろん。
椛が望む事は全て、俺が叶える。」
そう言ってふんわりと、柔らかい笑みを彼女に向けた。
椛(あぁ、この表情、本当好きだな…)
そんな彼の大好きな笑みを向けられると、自然と椛も笑顔になる。
そして彼は彼で、そんな彼女の表情を満足げに、見下ろしていた。
椛「全て俺が叶えるって…
大袈裟というか、それは甘やかせ過ぎたよw」
降谷「…そんな事ないさ…」
彼は少し口籠もって、何かその先を言いかけた様な気がしたが…
このままだとどんどん時間が経ってしまうので、とりあえず気持ちを切り替える。
椛「よし!
じゃあ梅仕事も含めて、全部ササっと終わらせよぅ!」
降谷「よしっ!
そうするか!」
その一言で、通常モードに一気に切り替わる2人。
夕飯の準備をしながら、梅の仕込み作業を同時に進める事にして、降谷もエプロンをつける。
なんだか2人でキッチンに並ぶのは久しぶりな気がして、隣で手を洗い始めた彼の様子を見守る椛。
手を洗っているだけなのに、やたらと視線を感じて顔を横に向けると、目が合い、嬉しそうにニコリと口角を上げた彼女の姿が降谷の目に映る。
降谷「どうかしたかい?」
椛「私、零と2人で並んでキッチンに立つの好き♪」
素直な彼女からの突然の告白に、思わず面食らうが、恋人からこんな事を言われて、嬉しく無い男がいるのだろうか…
口角が自然と上がってしまう。
そして眼下に広がる彼女の嬉しそうな笑顔と、かけられる言葉に、胸の中が温かく満たされる事を感じた。