第35章 闇の男爵夫妻
椛(この人本当、何してもカッコ良すぎるのよ…)
椛「今のショット、写真に収めて持ち歩きたい…」
思っていた事が素直に、椛の口から零れ落ちる。
目をつぶって髪に口付けを落としていた彼の瞳が、彼女の言葉に反応して開かれる。
降谷「ははっ、なんだよそれw」
先程までものすごい色気を放っていた癖に、急に少年のようなクシャッとした笑みを浮かべてくる。
本当に魅力が多くて、ある意味困った人だ。
そんな少年のような笑みを向けられると、少し冷静になってきて、今置かれている現実に引き戻される。
椛「ねぇさっき、電話で聞かなかったけど、零も夕飯これからだよね?」
降谷「あぁ、まだだよ。」
椛「夕飯食べて、梅仕事して、今日やらなきゃいけないこと全部終わったら…
その後はまた私の事、甘やかしてくれる?」
わざとやっているのか、自然に話しているだけなのだろうか。
おそらく今のは後者だろうが…
未だ腕の中に収まる彼女は、視線を合わせようとすると自然と上目遣いになる。
いつもの事ではあるが、家の中でしかも密着した状態されると、周囲に気を向かわなくて良い状況が、更に拍車をかけるのだろうか?
何というか…
とにかく威力が凄い。
今すぐにこのまま抱き上げて、ベットに運んでしまいたい衝動が湧き上がるが…
彼女のライフスタイルを崩す事は、降谷の本意ではない。
『公安』という特殊な立場を理解して、受け止めてくれているからこそ、彼女の持っている人生の軌跡も、今持っているものも大切に、同じように守っていきたいと降谷は思っていた。