第35章 闇の男爵夫妻
秀一「先程のかわし、中々だったぞ。」コソッ
声は沖矢のままだったが、口調は本来の彼に戻った言い回しで、言葉をコッソリとかけられる。
椛「…それって素直に喜んで良いのかしら。」ジト目
秀一「あぁ、もちろん。
褒めているつもりだが。」
耳元から顔を離して本来の身長差に戻ると、2人は目が合う。
片目を薄く開いて、グリーンアイを覗かせた姿がそこにはあった。
椛「…ありがと。」
そう一言告げると、椛は外門に向かって歩いて行った。
そして椛を見送り終わった沖矢は、2人が待つリビングに戻ってくる。
沖矢はもう一杯、今度は別の紅茶を飲もうと、ローテーブルに置いていたポットを手に取ると、再びキッチンに入っていった。
優作「彼女は想像以上に策士で、キレ者だな。」
オープンキッチンで、新しいお湯を沸かし始めた沖矢に声をかける。
優作「最後、感情論で揺さぶりをかけてくるとは…
敵に回したく無いタイプの女性だな。」
有希子「あのスルスルとかわす感じ。
清々しかったわね〜♪
それにしても、ゆうちゃんでも1個も何も聞き出せ無いとはね〜…」
考えあぐねているのか、諦めなのか…
はたまた、次の作戦を考えているのだろうか。
優作はソファに座りながら、体の凝りを伸ばす様に腕を上げている。