第35章 闇の男爵夫妻
カップに注がれた紅茶を飲み終わると、椛は退出する準備をする。
荷物をまとめると、三人に向かって挨拶をする。
椛「今日はありがとうございました。
優作さんと有希子さんにも、ご挨拶できてよかったです。
講座の方もご一緒頂き、ありがとうございました。
次回の講座は一応来週に入ってますが…」
そこまで言うと、沖矢に視線を向ける。
秀一「こちらは予定通り、来てもらって構わない。
良いですよね?
優作さん?有希子さん?」
優作「あぁ、それはもちろん構わないよ。
2人のプライベートの話だからね。」
有希子「えぇっ〜!
タイミングが合えば私もまた、ご一緒したいわ!」
椛「分かりました、では予定通り伺います。
また連絡します。
お邪魔しました。」
『玄関まで見送る』と声をかけ、リビングを退出する椛の後を追う沖矢。
荷物を持つ彼女の代わりに、玄関扉を開くと、素直に御礼を言う椛と沖矢。
沖矢「今日も楽しかったです。
ありがとうございました。」
椛「こちらこそありがとうございました。」
沖矢「博士にもよろしくお伝え下さい。」
椛「はい。」
邸宅の外に出ると、誰がいつ何処で、聞き耳を立てているかわからない。
2人は表向きの挨拶をする。
沖矢は少し背をかがめて、彼女の耳元に顔を寄せた。