第35章 闇の男爵夫妻
優作「………
では質問を変えよう。
ポアロで会った時は、椛さんは安室君がバーボンだと知っていて、近づいたのかな?」
椛(やっぱりどこが初めましてか、知ってるじゃん…
思いの外、嫌な質問の仕方をするな…)
新たに来た質問の内容に、
『やはり新一が絡んでいる情報は全て、2人は共有しているんだな』
と確信する。
発言の出方を見ているのか、椛の一挙一動を監視するかのように視線が注がれる。
椛「…やはり、随分と私を疑っているのですね。
仮に、その質問に素直に答えたとして、私の返答を信じるつもりが無いなら、どちらにせよ無意味な質問だと思います。」
優作「ほぉ…
なるほどね…」
真意を見極めようとしているのか、穏やかな中にも鋭さのある優作の視線が、椛に向けられ続けている。
彼女は彼女でその視線に怯む事なく、見つめ返す。
優作の質問に答える気はないのか、カップを片手に涼しげな表情を浮かべていた。
優作「…どちらにしても、彼がバーボンである事は事実だ。
椛さんを利用するつもりで…
近づいて来たのかも知れない。
何か、企んでいるかもしれない。
むしろその可能性の方が、私には高く見えるがね。
自分の都合の良い駒にするために、恋人を演じているだけかも知れない。
考え始めたらそんな可能性は、キリがない。」