第35章 闇の男爵夫妻
再び始まった言い争いは、有希子の笑いのネタにしかならないのか。
楽しそうに笑う有希子と、相変わらず淡々と言い争いを続けている2人。
口は動いていても、講座の準備する手は止めない椛は、確認と準備が終わると急にパッと気持ちを切り替える。
椛「はいっ!
では準備が出来たので始めます。
今日もよろしくお願いします。」
赤井「こちらこそよろしく頼む。」
椛「有希子さんも。
今日はご一緒頂きありがとうございます。
よろしくお願いします。」
有希子「あっ、はい!
こちらこそよろしくお願いします♪」
先程まで言い合いをしていたのに、急に講座モードに入った目の前の2人に、慌てて歩調を合わせる有希子。
椛は一通り今日の流れを説明すると、3人でキッチンに並び、手分けして梅を流水で洗い始めた。
洗った梅から、なり口を竹串で外していく。
なり口を取り始めると、目先の作業に集中し始めたのか、3人の口が止まる。
少し間を空けてから、有希子は2人に声をかけた。
有希子「ふふふっ♪
2人はいつも、こんな感じでキッチンに一緒に立ってるのね♪」
なり口を取る手はそのままに、隣に並ぶ赤井と椛に目を向ける。
視線を感じて有希子の方に目を向けると、とても楽しそうな美しい女優の顔が目に入る。