第35章 闇の男爵夫妻
並べられた梅たちを、いくつか手に乗せながらチェックしていく椛の様子を、沖矢は彼女の後に立って覗き込むように伺う。
秀一「どうだ?」
椛「うん、すごく良い感じ。
ちょうど良い。」
秀一「そうか。」
椛「毎日、梅の状態、写メ送ってくれてたし、助かったよ。
ありがとう♪」
秀一「いや、大した事ではない。」
振り返り、すぐ後ろに居る彼に嬉しそうに笑顔を向けると、沖矢もフワッとゆるく口角を上げた。
有希子「あらあらあらあら♪
2人は思っていた以上に、仲が良いのね。」
エプロンつける準備をしている有希子は、明らかに仲が良さそうな雰囲気を醸し出している2人の様子を見て、嬉しそうに笑っている。
有希子「それに、昴さんは椛ちゃんの前では変声機、オフにするのね〜♪」
最初の頃こそちゃんと沖矢を演じていたが、もう2人でいる時は見た目の変装はしていても、完全にそれ以外は素の赤井だ。
椛「有希子さん…
そうなんですよ。
いつも半化け状態なんです。」
秀一「こちらの方が楽なんでね。」
表情は沖矢だが、僅かに本来のグリーンアイを覗かせた。
椛「もうっ…
昴さんの声、忘れそう〜。」
赤井「なんだ?
沖矢の声の方が好きなのか?」
椛「いや別に。
そうゆうことじゃ無いけど。」
赤井「じゃあどうゆう事だ?」
椛「昴さんの時の話し方、柔らかくて紳士的だもん。」
赤井「悪かったな、素は紳士的じゃなくて。」
有希子「あははははははっ!!」