第35章 闇の男爵夫妻
椛「私は友人の情報を、他の人間に売ったりはしません。
例えそれが、恋人が相手だったとしても。」
優作「ほぅ…
椛さんはそれを、証明する術はお持ちなのかな?」
有希子「ちょっと、ゆうちゃん!
そんな意地悪な言い方しなくても…」
言葉使いに棘を感じたのか、優作の隣に座る有希子が間に入るが…
椛「そんなの、持ち合わせて居ないですよ。
なので、別に信じてもらおうなんて思ってません。
どうぞお好きに捉えてください。」
表情を変えずに、向かいのソファに座る優作を、ジッと見つめて言葉を紡ぐ。
優作も優作で、椛の1つ1つの反応を見極めようとしているのだろう。
纏っている雰囲気は穏やかだが、瞳の奥には隠しきれない鋭さがある。
広いリビングで、4人の周りに漂う空気は張り詰める。
昴「優作さん…」
そんな張り詰めた空気の中、沖矢が優作に声をかける。
まるで、
『これ以上は勘弁してくれ』
とでも言った様子が、見て取れた。
沖矢の言葉を聞くと、意図を汲む様に優作は小さく息を吐き出して、緊張を解いた。
優作「いや、変な言い方をして、すまなかったね。
昴君からも、貴方の話しは聞いている。
椛さんの事を完全に疑っていないと言ったら、嘘になるが…
それはさておき。
どんな女性なのか…
新一から話を聞いていて、ずっと気になっていたんだよ。」