第33章 ゼロのコーディネート
そんな発言をする彼女が、どんな表情で話しているのか気になり、前方に視線を向けながらも、チラリと助手席に目を向ける。
そこには少し口角を上げて、同じように進行方向に目線を向けている彼女の姿があった。
なんとなく、呼び方については、これ以上こちらから何を言っても、聞き入れてもらえない様な雰囲気を醸し出している。
風見は小さくため息を吐くと…
風見「ではせめて、敬語は取ってください。
それは流石に不要ですよね?
結城さんの方が目上の方なのですから。」
椛「ある程度大人になると、敬語で話すのは普通のことだと思いますけど。」
風見「それはそうかもしれないですけど…
自分の上司の恋人で、公安上層部の協力者の方に敬語を使われる事は…
流石に違和感があります。
難しかったら無理にとは言いませんが…」
椛「分かりました。
では敬語を使わない代わりに、風見さんも私の事はどうぞ名前で呼んでください。」
風見「ここに来て交換条件ですか…
一応理由を聞いてもよろしいですか?」
椛「??
交換条件と言うか…
ある程度の年齢の女性だと、仕事関連は別としても、
知り合い同士なら、苗字ではなくて、名前で呼ぶのが逆に普通かと思いますけど…」
風見「?」
どうやら全く意味が伝わっていないようで、椛には風見の頭の上に、クエッションマークが見えた気がした。