第33章 ゼロのコーディネート
だんだんとヒートアップしていく、2人の会話。
そんな2人の様子を、蚊帳の外に追い出されたような心地で、傍観する風見。
風見(あの降谷さんと、言い争いをしている…
しかも、降谷さんが若干押されている…)
いつもは見れないような上司の姿に、何故か新鮮な気持ちが湧いてくる。
そして言い争いをしてはいるが、なんだかんだ少し、本当にほんの少しだが…
そんなやり取りを、若干楽しそうに繰り出している上司の様子が見て取れて、少しホッとする。
いつも至って冷静に、時には冷徹に判断を下す姿の方が見慣れているが…
そんな上司の人間味が感じられる目の前の姿に、思わず気が緩む。
2人の会話に水を差す事は、少し悪い気もしたが…
風見「降谷さん…
お時間そろそろ…」
風見の声に、2人のトークがぴたりと止まる。
降谷は一度、軽く息を吐き出すと…
降谷「何かあったら必ず風見を頼ってくれ。
1人で無理はするな。
約束してくれ。」
椛「うん、分かった。
約束するよ。
零こそ気をつけて。」
降谷「あぁ。」
椛の返事を聞いても、完全には納得していないようだが…
彼女の右手を取ると、手の甲に口付けを落とし、一度柔らかく微笑む。
流石に部下の前では多少遠慮したのか、その後、椛の両頬に口付けを軽く落とすと、先に部屋を後にして行った。
風見(降谷さん…
やはり…
見てはいけないものを、見てしまった気がする…)
部屋を出て行った降谷を見送ると、少し時間差をつけて、2人も部屋を後にした。