第33章 ゼロのコーディネート
中から名刺を1枚取り出すと、初めて直接対面する彼女に向けて名刺を差し出した。
風見「大変失礼致しました。
警視庁公安部の風見裕也です。」
こちらは渡すだけのつもりだったが、名刺が出て来たと分かると、目の前の彼女はカバンから同じように名刺ケースを取り出し、一枚差し出して来た。
そのままの流れで、お互いビジネスライクに名刺交換をする。
風見(真面目な大人の女性だ…)
名刺交換を終えると、彼女の直ぐ横に立つ上司にチラリと一瞬視線を向ける。
彼女の腰に軽く手を回し、先程と同様、穏やかな笑みを浮かべながら、彼女の様子を見つめていた。
風見の視線に気付いたのか、いつもの表情に戻ると、声をかける。
降谷「風見、椛の事、今日はよろしく頼む。」
風見「はい、承知しました。」
降谷「もし何かあったら、必ず知らせろ。
そして必ず守りきれ。」
椛にかけていた声色とは打って変わって、一気にトーンが低くなる上司の声。
いつも聞いているはずなのに、今日は一段と低くて重く感じた。
風見「は、は、ははいっ!
この風見裕也、命に変えても必ずお守り致しますっ!!」
椛はそんな2人の様子を、クスクスと笑いを堪えながら眺めている。
椛「そんな、大袈裟だよ、零。
私は大丈夫だってば。
それに今から危険なところに行くのは、零の方でしょ…」
緊張して背筋を伸ばしている風見に、厳しい表情の降谷。
そして、そんな2人の様子を眺めている椛。
何ともアンバランスな空気をそれぞれ纏う3人。