第33章 ゼロのコーディネート
そして時は現在に戻る。
彼女が射撃の訓練が終わったあと、合流する手はずになっている部屋に、降谷と風見は先に入室する。
約束の時間の5分ほど前なので、じきに来るだろう。
部屋に入ると、窓の外を眺めるように窓際に立つ自身の上司。
今抱えている仕事の案件を2人で話をしながら待っていると、微かに廊下から2人分の足音が聞こえてきた。
それと合わせて、何を話しているかは分からないが、男女2人の話し声。
窓際に立っている降谷も気付いているのだろう。
仕事の話が途切れる。
風見は入ってくるであろう、人物を迎え入れようと、扉の方に足を向けると、後ろから声がかかる。
降谷「俺が開けるからいい。」
そう言ってサッと扉に向かって歩く降谷。
風見「えっ?
そんな事は自分が…」
『上司にそんな事をさせる訳にはいかない』と、足を踏み出すが…
風見の横を通り過ぎる瞬間、降谷の表情が視界に入り、思わずそのまま踏み出した足が止まる。
いつも公安で見せている厳しい表情でもなく。
潜入先の安室透としても見た事ない様な…
柔らかい笑みを浮かべながら、扉に向かって行った上司の姿に驚きを隠せない。
風見(降谷さん…
あんな降谷さん…
見た事ない…
恋人の前では、あんなにも柔らかい表情を浮かべるのか…)
部屋の外からノックが鳴ると、すぐにドアノブに手を伸ばして、降谷は扉を開ける。
その後ろ姿を、風見はジッと見つめていた。