第6章 ミッドタウン杯戸
椛「貴方は少し私のことを誤解している様です。」
安室「誤解とは?」
椛「安室さんの言う、白か黒かの判断は私には分かりません。
ただ一つ言えることがあるとするなら…
私は
『安室さん』
の味方ですよ。」
彼女は風になびく長い髪を押さえながら、彼に真っ直ぐと告げた。
その言葉に安室は目を見開き、こちらをじっと見つめている。
周囲は喧騒に包まれているが、一瞬彼女の言葉に『周りの音が一気に耳に入らなくなる』、そんな感覚を安室は感じていた。
すると安室のスマホが光っているのが見える。
椛「電話じゃないんですか?
どうぞ出て下さい。」
液晶に表示されている名前を確認し
安室「、、、ちょっとすみません。」
そう言って彼女に背を向けて電話に出る。
周りの喧騒もあり、何を話しているかはもちろん、彼女の耳には届かない。
ものの10秒ほどで電話はすぐに終わり、再び安室は彼女に向き直る。
安室「椛さん、すみません。
急ぎの用事が入ってしまったので、行かなければならなくなりました。」
先ほどまでの緊張感が溶け、申し訳なさそうに彼は詫びる。
椛「こちらは大丈夫ですよ。
探偵の方のお仕事ですかね。
急いで行ってあげて下さい。
こんな事になりましたが、ランチも展示会も一緒に行けてもとても楽しかったです。
ありがとうございます。」
周りはまだ事件の余韻に包まれていると言うのに、こちらは傍から見たら至って普通の会話に見える。