第31章 エルダーフラワーかローズか否か
梓はその様子に、少し不満げな表情を安室に一瞬向ける。
そんな梓の不満を拭い去る様に、目を合わせて笑顔を向け軽く頷くと、カウンターを出て、呼ばれたテーブル席へと足を運んで行った。
安室「お待たせいたしました。
ご注文をどうぞ?」
女子高生1「あのおばさんが食べている物と同じ物を、私達にも下さい!」
女子高生2「うんうん、おばさんと同じ物をお願いします!」
店内に響き渡る大きな声で、安室に伝える2人。
周りに座っていた関係ない他の客達も、思わずその女子高生達の様子を盗み見る。
梓「おば!?
おばさんって…」
いち早く心の声が漏れたのは、先程テーブルに行くことを安室から止められた梓。
安室の助太刀に行こうとしたのだろうか?
カウンターの中から出ようとした所を、椛に小声で呼び止められる。
椛「梓さん?」
椛の声に足を止めて振り向く梓。
『大丈夫だから。』とでも言う様に少し口角を上げて何度か頷き梓を見つめる。
梓「けど…」
梓の中に少し不満は残るが…
ひとまず安室の方に出る事はやめて、椛の座る側までやって来てくると、怒りと不安が入り混じるような表情で、奥のテーブル席に梓は目を向けていた。