第31章 エルダーフラワーかローズか否か
椛「まぁ、そうですよね♪
お気持ちは分かります。
原価は?
どちらも同じぐらいなんですか?」
安室「そうですね。
どちらもほぼ変わらないので、その点はどちらを選んでも良いかなと思っています。」
椛「そうですか。
そしたら…」
女子高生1「安室さ〜ん!!
注文お願いしま〜す!!」
先程からカウンターで続く2人の会話を遮る様に、奥のテーブル席から声が上がる。
内容が側から分からない程度に、少し声のトーンを落としながら会話をしていた2人の様子を、ずっと観察していたのだろう。
『そろそろ我慢出来ない』と思ったのか、その声には少し嫉妬と怒りが含まれていた。
そんな事は安室も椛も気付いてはいたが、周囲を気にし過ぎていたら、仕事は進まない。
仕事主義な2人は、物事につける優先順位をハッキリと線引きしている。
先程からずっと、安室と椛の様子を微笑ましく見守っていた梓は、
『せっかく良い感じだったのに!!』
とでも言う様に、少し口元をへの字にする。
安室から『新メニュー』の件について、話を聞いていた梓は、
『2人の仕事を邪魔されては困る』
と思い、そのまま安室の代わりに呼ばれた席に、注文を取りに行こうと足を踏み出すが…
安室にジェスチャーで止められた。