第31章 エルダーフラワーかローズか否か
梓は相変わらず少し気まずそうに、椛に視線を向けていた。
カウンター席に座ると、奥のテーブル席を背にして、梓に視線を合わせる。
梓は椛に向けて目で訴えたあと、持っていたトレイで口元を隠すと、周りには聞こえない様に小声で椛に話しかける。
梓「あの奥のJK達には、気をつけてくださいね。」コソコソ
梓の言葉に、椛も小声で周りに聞こえない様に、梓に向けて言葉を放つ。
椛「私は大丈夫だよ。」コソコソ
梓「椛さんが大丈夫でも、あの2人は安室さんのファンの中でも中々の過激派なんです!!
変に目をつけられて、椛さんに何かあったら私、安室さんに顔向け出来ません!!」コソコソ
声は小声だか、必死な形相の梓と、至って落ち着いている椛。
椛(はははっ…
過激派ねぇ…)
カバンからノートパソコンを出して、カウンターに置くと、電源はつけないまま、奥のテーブルの様子が黒い液晶に映る様な角度でパソコンを置く。
引き留め続ける女子高生相手に、『仕事に戻るから』と言って、掴まれている腕を解き、ちょうどこちらに近づいてくる安室の姿が見えた。
梓は近づいてくる安室の姿を確認すると、椛に出すおしぼりとお水を取りに、安室と入れ替わるように一度カウンター席から離れる。