第31章 エルダーフラワーかローズか否か
お互い笑顔を向け合うと、どちらともなく腕を伸ばして抱きしめ合う。
抱きしめながら、首、頬、こめかみ、額と順に彼女の顔中に口付けを落としていく降谷。
いつも以上に長く、そして多い、
『いってきます』のキスの挨拶に、嬉しい気持ちと、例えが合っているか分からないが…
なんとなく、犬にじゃれられている時と同じような感覚がしてきて、だんだんと笑いがこみ上げてくる椛。
椛「ちょっとw
ふふふw
零、どうしたの?」
恐らく、彼女はいつもより長い抱擁の事を言っているのだと分かるが…
降谷「あとでポアロで椛と顔合わせても、ポアロじゃキス出来ないから…
今のうちに沢山しておこうと思って。」
昨晩から散々キスを交わしたにも関わらず、
あまりにも可愛い彼の言い分に、嬉しさと笑いがこみ上げてきて止まらない。
椛「あはははw
何その言い分w」
降谷「ポアロは他の人の目があるからな~。
キス出来ないだろ?」
『他の人の目』と聞いて、少し以前の記憶が蘇る。
椛「前に私が入院している時、病室で、皆の前でキスしていたお兄さんいましたけど…
しかも子供たちもいたのに。」
降谷「あれは手の甲だったし、カウントには入らないだろ?」
椛「えっ?
そうなんだw
何その線引き基準w
あははははは!」
楽しくも幸せな朝の見送り時間は過ぎていき…
最後に唇に口付けを落とすと、彼は仕事に出かけて行った。
今日も2人の新たな1日が始まる。