第30章 ティラミスの行方
優しく触れる様に唇を合わせる。
触れる所から、命の温もりと体温を感じる。
数日ぶりに重なる唇は、安心感と共に高揚感を2人に与えた。
暫く柔らかく重なった唇の感触を満喫していたが、ここは玄関。
そろそろ離れようと、椛が首を引こうとすると、背中に回っていた降谷の手が椛の首の後ろに回され、再びしっかり唇が重なる。
椛「んっ…!?」
そのまま口付けは深くなるが…
唇は重ね合わせたままに、降谷が靴を脱ぐと玄関からフローリングに上がって来る。
フローリングに上がってきた彼に、押される様に椛は後ろに後ずさって行くと、廊下の壁に背中がつく。
先程まで、彼女の首の後ろと背中に回されていた彼の腕は、壁に背中がつくと同時に解かれて、代わりに両腕を手のひらに向かって辿るように取られると…
お互いの指がそれぞれ温もりを求める様に絡め合う。
逃げ場が無いように追い詰められて、身動きができず、降谷にされるがままの椛。
まるで、お互いの吐息が絡まり合う様な、過去一番深い口付けに、身体の芯が熱く熱を持ち始める事を、お互い感じていた。
少し唇を離すと顔は近づけたままに、言葉を発したのは降谷の方。
降谷「椛…
これ以上君を感じたら、
今日はもう止められる気がしない…
もしやめるなら今…
どうか俺を止めてくれ…」