第30章 ティラミスの行方
キスは自体は初めてではないし、ここ数日で何度もしてきた。
しかし抜糸明けの先日。
車内だったからまだ自制出来ていたものの…
室内だったら危うかったという事を、彼女も自覚していた。
彼の言葉に、閉じていた目を薄く開く。
理性の最後の一本の糸が切れる直前なのか…
切なそうに、そして欲に揺さぶられているライトブルーの瞳が目の前にあった。
椛(こんなに煽るだけ煽っておいて…
そんな事言うなんて…
本当ずるいよ…)
先程の言葉は、きっと彼の優しさだろう。
けど彼の願いを拒む理由はもう無い。
我慢していたのは彼女も同じだ。
椛「いいよ、止めないで続けて…
もっと零を…
私に感じさせて…
刻みつけて…」
その言葉を確認すると、視線を合わせたまま、彼女の身体に這わせていた手の動きを一度、ピタリと止める降谷。
『今度は何だ?』と思い、椛はそのまま彼の様子を伺うと…
降谷「ははっ…
本当にもう…
凄い殺し文句だな。
どうなっても知らないからな…」
そう言って、幸せそうに微笑みを向けると、今までにない様な優しくも噛み付く様なキスが降って来る。
椛「先に煽ったのは…
零だからね…」
抱きしめ合い、口付けは続けたまま…
お互いの抜け殻を廊下に落としながら寝室の扉を開け、足を踏み入れると…
2人はそのままベットに甘く傾れ込んでいく。
初めての…
甘くも長い夜を、共に過ごしていった。