第30章 ティラミスの行方
降谷「そのまま来てしまったのだが…
変だったかい?」
彼に声をかけられた事で、上から下まで動いていた視点が、降谷の顔に固定される。
やっと2人はしっかりと目が合った。
椛「ううん、凄いよく似合ってる…
その姿でプレイしてたのね。
やっぱり見たかったわぁ…
零がテニスしてる姿…」
椛(それに生脚、出ちゃってるよ…
男らしくも、綺麗な脚だな…)
いつもはズボンで隠れている彼の膝下が、今日は外気に晒されている。
普段は隠れている場所が表に出てると、ついつい目が入ってしまうのは人間のサガだろうか…
彼女の称賛の言葉に満足したのか、手に持っている荷物を玄関に置くと、そのまま彼女に手を伸ばし、抱きしめる。
まだ靴を脱いでいない為、2人の間には普段程の身長差が無い。
いつもより距離が近い心臓の鼓動を感じると、心に安心感を与えた。
降谷「今度は一緒に行こうな。
テニスコート。
2人で…」
椛「うん、いいよ…」
抱きしめながら発する彼の声は、いつも以上に酷く優しく聞こえた。
耳元で感じる彼のテノールがとても心地よい。