第29章 川品中央総合病院
安室「それにしても…
いつの間に下の名前で呼び合う仲になったんだ?
本当に…
油断も隙もないな、君は。」
椛「?」
彼の言葉に考え込む事をやめて、運転席に座る安室に視線を向ける。
少し剥れた様な…
それでいて、少しいじけている様な苦笑した表情を浮かべていた。
椛(こんな事でいじけるのか…
本当に可愛い人だなw)
補足の説明をしようと、彼の質問に答える。
椛「長野の帰りの車の中で、講座の申し込みがあったって話してたじゃない?
あれ、日程が結構あの後直ぐだったんだよね。
講座中、皆の前で『警部』と呼ぶと、他の受講生達が萎縮しちゃうから、警察官である事は伏せて、普通に名前で呼んで欲しいって言われて。
その時から名前で呼ばせてもらってる。
それで、その講座の後に色々話をしたの。
ヒロ君の事とか。
せっかく長野から出て来てもらってるわけだし。
この機会逃すと、いつ話せるか分からないと思って。」
彼女の説明に不可思議な所はない。
『我ながら子供じみた事を言ってしまった』と安室も思ったが、
彼女の事になると…
今までもそうだったが、過去の常識内では感情の扱いがどうも枠内に収まらない…