第29章 川品中央総合病院
2人は車に戻り、車内に乗り込む。
先程、行きに花屋さんに寄った時から気付いてはいたが…
彼が購入した仏花は3セットだった。
と言う事は、今日のお墓参りはここでお終いという事を意味している。
今日の安室のリミットは夕方ぐらいと言っていた。
時間的にも、そろそろ戻らないといけない時間でもある。
シートベルトに手をかけながら、彼に問いかけた。
椛「安室さん?」
安室「なんでしょう?
椛さん。」
椛「今日の予定はこれで終わりなんだよね?」
彼女の言葉に、いよいよ今日1番言わなければならないと思っていた事を口にする。
安室「あぁ、そうだよ。
墓参り自体はこれで終わりだ。」
彼の少し含みある言葉に、次の言葉を聞く事が怖い様な、早く言ってほしい様な感情が湧き立つ。
エンジンはかけず、シートベルトを締める気がまだ無いような彼の様子に、
『少しこのまま長話になるのかも』
と思い、椛もシートベルトから手を外した。
安室「椛さんも、聞いていると思うけど、ヒロは殉職してるが、表向きは生存している事になっている。」
椛「うん…」
少し俯き、悲しそうな表情を見せる彼女に胸が痛むが、いつか話さなければならないと思っていた事を告げる。