第29章 川品中央総合病院
男「くそっ!」
安室(コイツっ!!)
ナイフの行先を見届けた安室は、男の両腕を縛り上げると、床に伏せさせて拘束する。
一番近くにいた看護師に
『何か縛るものはないか』
と声をかけると、看護師たちは一番近くにあるナースステーションに入ると慌てて何かを取り出す。
そして一瞬で戻ってくると、手には防災用のロープ。
流石病院の看護師。
緊急時の対応が迅速だ。
安室はロープを受け取ると、男の手足を拘束した。
男性の看護師に声をかけて、拘束した男の監視を頼むと廊下の先にいる椛の元へ駆け寄った。
安室「椛さん!大丈夫ですか!?」
彼女が庇った医師は、廊下の背もたれに背中を預けて座り込んでおり、その向かいに医師の心配しながら、しゃがみ込んで医師の様子を見ている椛の姿。
椛は、駆け寄ってきた安室を見上げて返事を返す。
椛「私は大丈夫です。
先生は…
力が抜けてしまった様です。」
取り敢えず、2人に怪我がなくてホッと胸を撫で下ろす。
その様子を近くで見ていた看護師が車椅子を持ってきて、医師を車椅子に乗せる。
遠くからパトカーのサイレンが近づいてくる音が、病院内からも聞こえた。
先程の状況から、1番に説明を求められるのは安室だろう。
2人は医師に挨拶をして離れようとすると…