第29章 川品中央総合病院
椛「…安室さん?」
安室「何ですか?」
言葉遣いは安室に戻ったが、声色からまだいじけてる感が伝わってくる。
椛「今日は忙しい中、一緒に来てくれてありがとう。
あと、沢山心配かけてごめんね。」
彼女はそう言って、隣を歩く安室の腕に自身の腕をまわした。
そんな彼女の様子を、チラリと一瞬横目に見て、安室は小さく呟く。
安室「いくら命に別状が無いと言っても、君が怪我をするのは嫌だ…」
椛「うん、そうだよね。
ごめんね、今後は気をつけるね。」
安室「今回の件は別に君が悪いわけじゃ無い…」
椛「うん、それはそうかもしれないけど…」
このままだと堂々巡りになりそうなので…
椛「どうしたら機嫌直してくれる?」
彼女の提案の言葉に、そっぽを向いていた顔を戻して椛の方に目を向ける。
自身の腕に絡みつき、上目遣いで、回答を待っているその姿は、安室からしてみたら可愛くて仕方がない。
そんな姿が目に入れば、一瞬で今まで胸の中にまとわりついていたモヤモヤは一気に晴れる。
だがせっかくだから、彼女の提案に乗ろうと男心がチラつく。
安室「…じゃあ、車に戻ったら…」
「キャーーーーーーーーー!!!!」
安室が何かを言いかけた瞬間、突如響き渡る女性の叫び声。
声がした方に目を向けると、手に刃物を持って振り回している男の姿が2人の目に映った。