第29章 川品中央総合病院
椛「『安室さん』は演技派ですね。
今度は俳優にでもなるつもりですか?」
再び少し恨めしそうな表情で、隣を歩く彼に問いかける。
安室「何の事か分かりませんね♪」
彼は色々自身の思惑が通ったからか、満足そうな表情をしていた。
椛「『ご主人』って所は流石に否定しようよ。
上手いこと使っちゃって…
先生にも看護師さんにも悪いよ…」
彼女のその言葉に、先程までのご機嫌顔は何処へやら。
一気に不機嫌顔になる。
安室「何でだよ。
そこは別に否定する様なところじゃないだろ?」
椛「えっ??
否定する所でしょ。
『ご主人』ではないでしょw」
彼女の言葉にさらに頬を膨らますと…
安室「それはそのうちなるんだから、いいだろ…」
椛「えっ?」
今まで前に視線を向けていたが、その言葉に隣を歩く彼に視線を向けた。
そこには膨れっ面をしながら、そっぽを向いて照れた様に少しいじけている彼の姿があった。
椛(自分で言っておいて照れてるのか…)
彼はどうやら
『思いの外、独占欲が強いらしい』
と一連の流れから彼女は感じた。
椛(普段はカッコいいのに、こういう所は本当に可愛いな…。
女子なんて、今までよりどりみどりだっただろうに…。)
そんな事を思っていると、改めて自分が今置かれている現状が、とても恵まれていると感じずにはいられない。