第29章 川品中央総合病院
看護師さんによって脚の付け根までスカートの裾がまくられ、傷口に当ててあるガーゼ類が全て剥がされる。
看護師はそのまま消毒を済ませると、『先生』と声をかけた。
その声にデスクに座り、手袋をはめて準備をしていた医師が座ったまま椅子をスライドさせて診察台の横にやってくる。
患部の状態を少し触りながら確認すると…
医師「うん、綺麗にくっついてますね。
予定通り抜糸しましょう。」
そう言うと、抜糸剪刀を手に取り、縫合糸をカットしながら抜いていく。
「パチンパチン」と縫合糸をカットする音が室内に響いていた。
全てカットし糸を抜き終わると、医師は満足そうに声をかけた。
医師「結城さんは傷の治りが、とても早いですね!!
大きな傷だったけど、なるべく傷跡が残らない様に、出来るだけ細かく縫合処置しましたが…
かなり綺麗にくっついてますね!
一年ぐらい経てば、傷跡は遠目からならもう、殆ど目立たなくなると思いますよ!」
そこまで傷跡にこだわりは無かったが、その医師の言葉を聞くとやはり嬉しい。
医師「結城さんも起き上がって、見てみますか?
ご主人も良かったらお近くでどうぞ。」
同席したいと言いつつも、邪魔にならない少し離れた後ろから様子を伺っていた安室も、医師の言葉に診察台の脇まで近づいてくる。