第29章 川品中央総合病院
彼の言葉に顔を上げて、目を合わせて答える。
椛「今日これから抜糸だし、もう傷口はくっついてるから大丈夫だよ♪」
安室「う~ん、そうだが…
深く切っていたんだし、まだあまり無茶はしない方が良い。
傷口が伸びて広がると、痕が大きく残る。」
椛(相変わらず過保護炸裂だな…
けどまぁ~、
今回の事は責任を感じちゃってるんだろうし…)
椛「は~い、分かりました。
もう今日は走りません。」
あまり納得はしてないが、今回は彼の言葉に折れることにした様だ。
安室「そうしてください♪」
彼女の言葉に納得したのか、柔らかく微笑みを向ける安室。
そのまま彼女の手を引いて、停車してる車の前を通り過ぎると助手席まで行き、ドアを開ける。
安室「どうぞ♪」
そう言って笑顔を向けながら、ドアに手をかけてエスコートする彼の姿は、本来の外見も相まって、やはり本当にどこかの国の王子に見えてくる。
椛「ありがとうございます…」
彼の雰囲気に思わず軽く照れるが、素直に助手席に乗り込みシートベルトに手をかけ、締める。
安室は椛が乗り込んだことを確認すると、助手席のドアを閉めて、運転席に回り込んだ。
運転席に座り、彼もシートベルトを閉めようと手をかけるが…
ふと何か思い出したのか、『あッ』と小さく声を上げた。