第29章 川品中央総合病院
翌朝。
今日は朝起きてから、外に出かける準備をしている。
食料の買い出し以外の外出は数日ぶりだ。
そんな久しぶりのお出かけに、どうしても高揚する気持ちを抑えることは出来ない。
出かけ先といっても、まず向かう先は病院なのだが…
ずっと家にいるよりはマシだろう。
パンツスタイルは、傷口に当てているガーゼが当たるため、まだ出来ない。
ロング丈の花柄ワンピースの上に、日焼け防止も兼ねたライトブルー色のカーディガンを羽織った所で、スマホの電話が鳴る。
急いで電話に手を伸ばして、コールを取る。
椛「おはようございます。安室さん。」
安室「椛さん、おはようございます。
少し早いですが、着きました。」
椛「了解です、ありがとうございます。
今出ます!」
そのまま鞄を手に取り外に出ると、いつもの愛車に寄りかかり立っている彼の姿が目に映る。
安室も椛の姿に気が付くと、軽く右手を挙げて挨拶をする。
軽く駆け足で彼のもとへ駆け寄ると、彼は軽く両腕を広げたため、彼の真意に気が付き、そのままハグを交わした。
安室「まだあまり、走るのは良くないでしょう?」
ハグを交わしたまま、言葉を発する彼はいつもより声のトーンが若干低い気がするのは、彼女の気のせいではないだろう。