第28章 早く起きた朝は
降谷「椛…」
椛「それに零が今の立場じゃ無かったら、私達出会ってないよ!」
彼女はそう言い放つと、降谷の胸に顔を埋めながら抱きついてきた。
椛「『世の中の普通』に合わせなくて良いよ…
私は『零の普通』で良いのに…
零のバカ…」
どうやら、彼女を酷く悲しませてしまったようだ。
降谷「そうだな…
今のは俺が悪かったよ。
ごめん、椛。」
ギュッっと抱きついてくる彼女を安心させたくて、彼女の頭を優しく撫ぜた。
このままずっと抱きついて居たい気もするが、時間は刻々と過ぎていく。
椛「流石にそろそろ行かなきゃだよね?」
降谷「あぁ、そろそろ行くよ。」
椛「引き止めてごめん。」
降谷「いや…
椛?
顔を上げてくれないか?」
その彼の言葉に、素直に顔を上げて彼を見上げる。
そこにはちょっと困ったような、はにかんだような彼の表情が目に映った。
降谷「俺、椛の事絶対幸せにするよ…」
椛「私、今のままでも結構幸せだよ?
零が側にいてくれたらそれで。」
降谷「…じゃあ、椛の幸せが続くようにずっと側にいる。」
椛「うん、私の側にいて…
私は?
どうしたら零を幸せに出来る?」
降谷「俺も、椛が側にいてくれたら、それで十分幸せだよ。」
椛「分かった、じゃあ側にいる。」
降谷「うん、そうしてくれ。」
どうやらお互い納得したようで、幸せそうに微笑み合った。