第28章 早く起きた朝は
降谷「ずっと家に篭りきりだったんだ。
そろそろ出かけたいだろ?」
そう言って一度箸を止めて、隣に座る彼女に視線を向けると、優しく微笑みを向けた。
椛「零…」
どこまで気が効く人なんだろう。
彼の気遣いに、心が温かく満たされる事を感じた。
降谷「それに、俺も久しぶりに椛と一緒に外の空気を吸いたいよ。
家で、2人きりで過ごすのも好きだけど。」
彼の言葉に彼女も一度箸を止めると、隣にいる彼の腕に『ギュッ』と抱きついた。
椛「ありがとう、零。」
降谷「あぁ、こちらこそ。
いつもありがとう♪」
彼女の背中に腕を回して、大切な物を触るかのように優しく撫ぜる。
降谷「椛は、どこか行きたい所はあるかい?」
病院の後は真っ直ぐ帰ってきて、怪我の養生の為キャンセルした分の振替講座のスケジュールが翌日から控えている為、それに備えようと思っていた。
まさか急にお出掛けの予定ができると思っておらず…
パッと出て来ない。
椛「そうだな〜…
今パッと思い浮かばないけど…
零はどこか行きたい場所ある?」
彼女の言葉を聞いて暫く思案している様で、二人の会話に間が開く。