第27章 ゼロの恋人
降谷「……」
彼女の言葉を聞いて、亡くなった親友の顔が真っ先に思い浮かんだ。
別に昔の恋愛を引きずっているとか、そういう類いの話では無い事は、今までの彼女の発言や様子を見ていれば分かる。
淡々と話す彼女の様子から見ても、もしかしたら本人もあまり自覚が無いのかもしれない。
本来と言うか、いつもは感情豊かな女性だが、たまに…
本当にごく稀に、物凄く事務的に物事をこなす場面がふとあるな、と感じていた。
今の話ぶりも正にそんな感じだ。
公安に対して、悪い印象を持っているとかでは無い事は分かっているが…
おそらく…
景光との過去が、彼女の公安に対する印象を構築しているんだなと、ここに来て強く感じた。
降谷「椛?」
椛「うん。」
降谷「確かに、公安の人間は、恋人や家族を作らない人間の方が圧倒的に多い。
それはさっき椛が言った通り、何かあった時に、人質に取られたり、逆恨みにあったり、危険なことに巻き込む可能性があるからだ。」
椛「うん…。」
降谷「だからといって、全く居ないわけでもないよ。
中には結婚して、家庭を持つような人間ももちろんいる。」
椛「……」
降谷「俺のそばにいる事は、普通の人の側にいるより、危険な事に晒される可能性が高い…
けど、約束するよ。
椛の事はこれから先ずっと、俺が命に変えても必ず守る。」
少し俯いていた彼女は、降谷のその言葉に顔を上げて彼を見つめた。