第27章 ゼロの恋人
彼の空いている方の手に向かって、椛は手を伸ばすと、しっかりと握り返してくる大きく逞しい彼の手。
繋がれた手元に、視線を向けていたが、この引きこもり生活が終わる前に、彼に確認しておこうと思った話を彼女は持ち出した。
椛「ねぇ、零?」
降谷「ん??
なんだい?」
椛「抜糸が終わって、私が元の生活に戻ったら、私、外でどうすればいいかな?
今まで通り、知人として接した方がいいよね?
『潜入捜査中の安室さん』に対して。」
降谷「えっ??」
椛の思わぬ発言に、抱き寄せていた腕を緩めて、彼女の表情に目を向ける。
その表情は至っていつも通りで、むしろ
『何か私、変な事言ったかな?』
とでも言うように、軽く首を傾げている。
降谷「どういう事だい?」
椛「どう言う事ってどう言う事?」
降谷「俺達…付き合い始めたんだよな?」
椛「…私たち、付き合い始めたの?」
降谷「えっ!?!?」
どうも噛み合わない二人の会話。
降谷は彼女を病院に迎えに行ってからの、今の今までの会話を振り返る。
確かに想いは伝えあったが、『付き合ってくれ』と言う言葉は言って無かったし、彼女も言ってない。
だが、以前とは変わった2人距離感から、完全にそのつもりでいた降谷は彼女の発言にショックを受けるが…
それどころじゃない。