第27章 ゼロの恋人
そんなことを思いながら、彼の瞳をジッと見つめていると…
彼はまるで…
『もう待ちきれない』とでも言うように、
首を伸ばし、顎を上に上げ、
離れている距離を埋める様に、唇にキスをせがんで来る。
そんな彼の様子を目の前で見せられると、もう椛はたまったもんじゃ無い。
胸の奥が『キュウっ』と締め付けられて、身体の芯が更に熱を持ち始めた。
降谷の両頬を両の手のひらで包み込み、
そして彼の要望に応えるように、彼女はゆっくりと顔を落とす。
柔らかく重なり合う唇の感触と、お互いの温もりを確かめ合う様に、2人は唇を重ねていった。
暫くそのままの状態でキッチンに居たが、もちろんずっとそこにいる訳も行かないので、そろそろ寝る準備に備えて交代でシャワーを浴びる。
先にシャワーを浴び終えた彼女が、リビングで髪を乾かしていると、浴室から出て来た彼に後ろからドライヤーを奪われる。
降谷「俺にやらせて?」
彼の要望に応えて、大人しくそのまま髪を乾かしてもらう。
人に乾かしてもらうのが気持ち良いのか、彼女は目をつぶって気持ちよさそうな顔をしていた。
何気なくお願いしたが…
しっかり櫛で髪を溶かしながらドライヤーをかける様は、さながら美容師の様だ。