第27章 ゼロの恋人
椛「私も…
零と出会えて幸せだわ。
ありがとう、零。」
そう言って両腕を彼の首に回すと、降谷は至極幸せそうな笑みを浮かべて、椛を抱き上げ、そのままキッチンカウンターの上に座らせる。
キッチンカウンターに上げられた事で、普段と身長差が逆転した。
いつもは見上げて見ている彼の表情が、見下ろす側に変わると…
こんな少しの変化で母性本能がくすぐられ、『守るべき存在』に見えてくるから不思議なものだ。
そしていつもは、遠くの場所にあるように感じていた彼の額が、すぐ目の前にあって、前髪をめくってみたい衝動に駆られる。
右手で彼の前髪を少しとくと、手のひらで全ての前髪を掻き分けて、いつもは隠れている彼の額を晒す。
普段は実年齢より幼く見える彼だが、前髪を掻き分けて額が見えるだけで、なぜだか急に男の色気が一気に増した様に見えて、心臓がドクリと反応し、身体の中心が熱を持ち始める。
そのまま吸い寄せられる様に、彼の額に優しく唇を落とす。
普段前髪で隠れている場所だからか…
触られ慣れてない場所だからか…
降谷はくすぐったいのか、椛の腰に回されている彼の指が『ピクリ』と反応して、服を握られた様に感じた。
一度少し顔を離して、彼の表情を確認する。
いつもより潤いのあるライトブルー瞳は、キラキラと揺れて、普段以上に輝いている様に見えた。
椛(今日も一段と綺麗だな…
ずっと見ていられそう…)